第13話 小田切基道編②

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 しばらく待っていると、7階建てのビルから女性だけが出て来た。  女性はS駅から南にあるK駅を跨ぎ、西へ歩いていく。  K駅の西側には、閑静な住宅街がある。今から帰宅するところなのかもしれない。  女性は、街路樹の並ぶ道を南へ進んでいき、白い壁の高級マンションへ姿を消した。そのときもさりげなく写真を撮る。  初日に、こんなに大きな収穫があるなんて。  これは偶然か?  それとも、アンケートの【人捜し】効果なのか。  僕は、ネットでマンションから近いホテルを検索しようと携帯を取り出した。  そのとき右手を使おうと試みたが、やはり、右腕は動かない。  慣れない左手で画面を操作しようとしたとき、メールが1通届いているのに気がついた。  ……千華子さんからだ。
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