アイノヒニ、コノアイヲ。

5/11
516人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
足と同時に固まった身体は動けないまま、じわりと首だけで振り返る。 目を見開く私を待ち受けていたのは、顔のほとんどをマフラーに埋めた男性。 そして、目深に被ったニット帽の陰から覗く、弓なりに細められた黒の瞳だった。 「おつかれさま」 今度ははっきりと私に向けられたとわかる声に、……視界が滲んだ。 うそ……どうして…… 「……さとるくん、は、今学校休みで……」 「まあ、家は近いし。……今日くらいは、  ……会いたかったから」 数歩分だけ離れたところで、さらに細められる目元に、抱えていたバッグを強く抱きしめた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!