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足と同時に固まった身体は動けないまま、じわりと首だけで振り返る。
目を見開く私を待ち受けていたのは、顔のほとんどをマフラーに埋めた男性。
そして、目深に被ったニット帽の陰から覗く、弓なりに細められた黒の瞳だった。
「おつかれさま」
今度ははっきりと私に向けられたとわかる声に、……視界が滲んだ。
うそ……どうして……
「……さとるくん、は、今学校休みで……」
「まあ、家は近いし。……今日くらいは、
……会いたかったから」
数歩分だけ離れたところで、さらに細められる目元に、抱えていたバッグを強く抱きしめた。
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