アイノヒニ、コノアイヲ。

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会いたいと思っているのはいつものこと。 だけど、“今日”会いたいと思ってくれていたことに、運命なんて言葉で言い表せないような感動が、心の芯から全身までをも震わせた。 「きょ、今日ね……っ」 寒さではない震えに強張る口唇が、もつれた言葉を白く吐く。 それを受け取ってくれるさとるくんは、「うん?」と優しく首をかしげてみせた。 「誰も居ないって、わかってるのに……、さ、三階の、校舎とか渡り廊下とか……何度も、何度も、目が行っちゃって……」 駅舎の温かな明かりの中からそっと歩み寄ってくれるさとるくんに、固まっていた身体が自然と吸い寄せられる。 「学校に行っても、さとるくんが、居るわけ、ない……って、わかってたのに……私……」 「……」 「し、失敗しないようにって思いながら作っても、可愛いリボンかけて綺麗に包装しても……」 「……」 「きっとこのまま、バッグから出せずに、持ち帰らなきゃいけないんだろうな、って……」 「だから」 「……」 「もらいに来たんでしょ、それ」 「……っ!」
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