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カイリの住む街から10数km離れたリギア村の近林。
「ヒャハハハハッ!!」
2人のエルフの親子を3人の獣人族が襲っていた。
「ぐっ、囲まれたか……」
「パパ……」
少女は父親の後ろに隠れて震えていた。
彼女は普段、気丈に振る舞っているが、危機感で縮こまる事しか出来なかった。
「グルルルル……」
威嚇する獣人族の1人。
「よく聞いて。リギア村は近いうちに戦場になる。それは知ってるね?」
父親が臨戦態勢に入りながら小声で囁く。
「うん、知ってる」
少女はコクリと頷いた。
「じゃあ何故オレ達がここにいるのかも分かるね?」
「うん、勇者を連れて来る為でしょ?」
「そうだ。しかしこのままじゃ勇者のいる街に辿り着く事が出来ない。だからパパが敵を引きつける。その間に逃げるんだ。そして勇者を連れて来てくれ」
「でもパパは……」
「大丈夫だ」
父親は上腕二頭筋に力こぶを作って笑って見せる。
「パパは死なないよ。だから行くんだ。そして勇者と一緒に戻って来てくれ」
「………うん」
少女はコクリと頷いた。
「合図を出すからその瞬間、走って逃げろ。いいな?」
「うん」
「3……2……1……今だ!!」
少女は走り出した。背後で父親の咆哮を聞きながら出来る限りの全速力で木々の間を縫って駆ける。
ーーパパ、待ってて。必ず勇者を連れて来るから。
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