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窓にはブラインドが降りていて、中の様子は見えない。
だけど隙間からは明りが漏れていて、中に人がいるのは確かだった。
入口に『本日休診』の札がかかった病院の前を、通り過ぎては戻り、また行き過ぎては引き返し……
学校にも行かずに昼過ぎから、一体何時間この辺りをうろうろしただろう。
あの日からずっと。
頭から、離れない。
『キミが来るなら、開けてもいい』
『味見だけじゃ、足りないようだ』
2月14日。
今日その扉を開けるということはつまり、そういう事だ。
あの時のアレをただの『味見』だというなら、きっと今日は――。
「……っ」
思い出しただけで疼く。
あの人が触れた感触、耳にかかった息と甘い声。
それなのに核心は避けた言葉と、今日の曖昧な約束。
引き返すなら今だ。
これが最後のチャンス。
こんなのは、普通じゃない。
普通じゃない――なのに。
抗えない誘惑。
ひと時も忘れられなかった悦。
ついに扉の前で足が……止まる。
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