第1話

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「上着とシャツを脱いで」 結局逃げ出すタイミングを失って座らせられた俺に、次の指示が飛んでくる。 「ふざけんな、言いなりになると……」 「傷を」 ……は? 「診せなさい。何故ずっと来なかった」 ……ただの、診、察? 思わず凝視した先の顔は、いつもの医者の顔だった。 蔑むような嗤いも微塵の甘さも含まない。 「や……だって、先生、が」 14日に来い、と。 怪我などなくてもと。 だからそれまでは、来るなってことなんだと。 言い訳は宙に消え、毒気を抜かれて、言われた通りに上半身を晒した。 あの日処置してもらった肩の傷は、とうに塞がっている。 にも関わらず、 「ほら、放置するから」 苦々しそうに眉をしかめた先生が、その傷跡にそっと触れた。 「跡が残るじゃないか」 それは医者としての、言葉なのか。 だけど傷跡を辿るその指の感触に、俺の熱は一気に高まっていく。 「別に、これくらい。もういいか?」 このままではまた流される。 何度もコケにされて嗤われて、もう掻き乱されるのは嫌だ。 早々に服を着ようとシャツに伸ばした手は 「なっ」 目標に辿り着く前に、先生に捕まった。 「何言ってるんだ。――これから、だろう」 真顔で言う先生が怖くて、 怖くて、怖くて、 怖くて ――綺麗だ。
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