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『其れでは今日の授業を始めます』
神宮秋奈は、パイプ椅子から立ち上がり、背景のホワイトボードに向かって歩きだした。
褐色の長髪が其れに合わせてカーテンの様に揺れ、コツコツとヒールの靴音が画面から聞こえると、タブレットの動画を眺めていた生徒の視線が神宮秋奈に集中する。
『今日は皆に此の問題を解いて貰います、B氏がA氏のお金を盗んだ証拠を提示しなさい、制限期間は明日まで。
先着正解者一名のみ、私の自室で特別接待してあげます』
神宮秋奈の反転教育は、国語、数学、科学、社会、そのどちらでも無い“推理”の講義であるが、既に犯人の目星は付いており、後は証拠を挙げるだけと言う問題。
「先生、今度こそ当てますよ」
神宮の生徒、本野学は画面に表示されるタクトを手にした彼女のイラストにタッチペンを当てる。
そうする事で問題のヒントが、獲得出来るのだ。
『ヒント1・B氏は確実な証拠を持っており、それは今現在も未処理です』
秋奈のイラストがタクトを上下しながら、ヒントを解説する。
「証拠は持っているのに、未処理とはどういう事だ?」
本野は色々と考察を巡らせる、証拠未処理の理由とは、処理出来ない証拠が在ると言うのか、それとも、
犯人のBは、証拠の未処理に気付いていないのか?
無性に気になり、再び画面の中の小さな秋奈にタッチする。
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