シュウライ

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「一応測って」 「はーい」 暫くして体温計が鳴る。 「何度?」 首を傾げると、 「ももちゃんが見て」 と、脇の下から体温計を抜き取り、自分では見ずに私に差し出してくる。 なんじゃそりゃ!と思いながらも体温計を見ると、38.6分。 結構ある。 「38度……」 体温を伝えようとすると、「言わないで!」と凄い勢いで遮られた。 「……なんで?」 訳がわからず不思議そうなに問うと、 「体温を聞いたら、凹んで余計に熱が出そう……だから」 そう言う彼の声は、尻つぼみでどんどん小さくなっていく。 「ぷっ」 あまりに子供じみた理由に思わず吹き出してしまった。 「あはははは」 「笑うなー」 「だって、子供じゃないんだから、ぶっ、あはははは」 「笑うなーーー」 「あははは」 久々だった。 こんなに笑ったの。
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