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「ももちゃん」
彼の妙に艶美な声が、私の髪を揺らす。
「な、何」
「ももちゃん、寝室どこ?」
「は、はいっ?」
ドッキリワードが聞こえてきて、彼に背を向けたままの状態で目を真ん丸に見開いた。
「なんで寝室なのよ?」
「頭がグルグルするからお布団で横になりたい」
あー、そういうことか。
って、お布団って。
ここは保健室じゃないんですけど……。
「ももちゃーん、お布団行こうよー」
まるで小さな子供のようにイヤイヤと体を左右に振り、私の髪をかき分けるように顔を埋めてグリグリしてくる。
「はぁ、わかったわよ、氷枕持ってくるから待って」
言うと、パッと私から離れ座ったまま私を見上げ、嬉しそうに尻尾を振っている、ように見えた。
まー、私が一緒に寝るわけじゃない、彼の体が少し楽になるまで休ませてやるか。
私って、つくづく彼に弱いなぁ。と、落胆しながらも、氷枕を取りにキッチンへ向かった。
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