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その日も彼が保健室を訪れることはなく、私は学校から家路についた。
玄関で乱雑に靴を脱ぎ捨て、部屋のソファーに鞄を放り、真っ先にシャワーを浴び、いつもの楽ちんなスウェット上下に着替え、途中で買ってきたお惣菜をチンして食べる。
この一週間、ずっとこんな生活を送っている。
養護教諭として、生徒には見せられないような私生活だった。
開き直ったつもりでいたが、吹っ切ったつもりでいたが、意外にも心の傷は深かったみたいだ。
惣菜を温めすぎてハフハフと息を吹きかけていると、玄関のチャイムが鳴った。
壁に掛けられた時計に目をやると、時刻は21時を回っている。
……こんな時間に誰だろう。
インターホン越しに「はい」と返事をする。
暫く待ってみたが返事はなかった。
何よ?悪戯?
イラっとしてインターホンを切ろうとしたとき、その声は聞こえた。
「ももちゃん……」
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