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思いもよらない訪問者に、ドクンと胸が波打つ。
「ど、どうしたの?」
声が震える。
「ももちゃんに会いたくて……」
インターホン越しに聞こえる懐かしく愛おしい声に、夢中で廊下を走り玄関を開けていた。
玄関の先には、私服姿の彼が立っていた。
その彼の顔は、心なしか少し赤みを帯びているように見える。
この一週間彼を忘れるように努力してきたのに、彼の顔を数秒見ただけで気持ちが引き戻される。
胸が掴まれたみたいにキューってなって、やっぱり泣きたくなる。
――でも、彼には彼女がいる。
それは、揺るがない事実。
乱れた心内を隠すようにして、冷静を取り繕う。
「こんな時間に……どうしたの?なんで私の家がわかっ……」
「はは、ももちゃんスッピンだー」
私の言葉に被せるように白い歯を見せる。
彼の何気ない一言に、瞬時に血の気が引いていく。
それはもう顔面蒼白なんてものじゃない、蒼白通り過ぎて真っ白。
いや、それ以上、真っ白通り過ぎて透明で見えないかもしれない。
いや、見えないのは言い過ぎだけど。
とにかく、このまま彼の前から姿を消したいよ。
だって……
既にシャワーを済ました私は、スッピンは勿論、数年着古し毛羽立ったスウェット(しかも上着をズボンにイン!)に、挙句の果てには前髪をチョンマゲに結んでいたのだ!
極め付けに……
ノーブラだったのだ!
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