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「だからって……ももちゃん冷たい」
彼の声に合わせ、隙間から見える彼の足が微かに動く。
「なんでここがわかったの?」
「教員名簿で調べた」
「……。」
「ももちゃんお願い、ここ開けて?」
「……。」
「お願い……お願いします」
弱々しい声に心がグラグラと揺れる動く。
開けたいけど……
……でも、やっぱり駄目っ!
彼の侵入を許してしまったら、もう彼から逃れられなくなってしまいそうで。
「……駄目、帰って」
「嫌だ、帰らない」
「帰ってよっ」
テレビでよくありがちな修羅場シーンだな、と、客観的に思う自分がいる中で、この状況に実際の私はめちゃくちゃ必死になっている。
その時、ドアノブを握る私の手がフワっと温かい感触が襲った。
彼の手だった。
僅かな隙間から腕を伸ばして、私の手をドアノブごと包み込んでいた。
私の手より一回り大きくて筋張った手。
その手は私の手をガッシリと掴みながらも、親指は私の手の甲を優しく撫でていく。
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