シュウライ

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「って、これお茶?」 コーヒーカップにお茶ってどうなの、と続けて吹き出す彼。 「湯呑がなかったから……でもコーヒーカップは保温性に優れてるの、それにお茶に含まれるカテキンにはウイルスを撃退してくれる効能があるのよ、いいから飲みなさい」 彼に負けじと真っ赤になってムキになって言いうと、 「そうなんだー、さすが保健室の先生、コホッ、コホッ」 と、今度は茶化すようにおだててくる。 「ほら、咳してるじゃない、お茶は喉にもいいのよ、早く飲みなさい」 彼は私の説明に納得したのか、素直にコクリと返事なく頷いて、コーヒーカップに注がれたお茶を飲んでいた。 その間にテーブルに広げられた惣菜をいそいそと片づけた。 「はー、あったまったー、ごちそうさまでした」 彼は空になったコーヒーカップを手に持ったまま、ソファーの背もたれに寄りかかった。 私は何も言わず彼の手からコーヒーカップを取ると、変わりに体温計を手渡した。
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