シュウライ

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テレビもついていない静かな部屋で互いに無言でコーヒーを飲み終えると、彼が私の手からサッとカップを取り、自分のカップと一緒にキッチンへ片づけに行く。 慣れた足取りでキッチンへと向かう彼の背中を、アホみたいにあんぐりお口を開けて呆然と見つめる。 ……なんか、違和感。 これじゃ、まるで本当に恋人同士みたいじゃん。 実際は、浮気相手なのに……、いや、生徒と教諭の関係なのに。 軽快な足取りで戻ってくると、彼は「そうだ、ももちゃん、シャワー貸して」と、声を弾ませる。 「え?なんでよ」 シャワーという単語に過剰に反応する私。警戒スイッチが入る。 「だって、汗沢山かいちゃったから気持ち悪くて」 着ているロンTの襟元をパタパタはためかせて眉を顰めている。 あ、そっか。 確かに、あれだけ熱があれば汗も沢山かいただろうね。 「いいわよ、廊下の一番手前の右のドアがお風呂だから入ってらっしゃい」 リビングのガラス扉を顎でしゃくると、彼は「ありがと」と言ってリビングを出ていった。
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