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黄昏時のコックスタンド市街、人通りの途切れた袋小路にて、二つの人影があった。
どん詰まりのフェンスにがしゃんという軽い音を背中に立てて、リーアの金の長い髪がふわりと揺れる。
両手は隣り合わせに立つジュピターのそれによって解けない糸のようにしっかりと絡められたままフェンスに押し付けられ、身動きが取れない。
「だめ、……待って」
切なる願いのように切り出された言葉は、
「待たない、嫌なら俺から逃げればいい」
真っ向からばっさりと却下され、そうして逃げ場のなくなったリーアに向けてジュピターは妖艶な笑みを浮かべ、にじり寄る。
栗色のさらりと流れる柔らかな髪が左右に揺らめき、色気を滲ませた金の瞳がリーアのサファイアブルーの輝きをしっかりと捉えた。
ジュピターの端整な顔立ちがリーアの視界一面を占拠していく。
鼓動ははちきれそうなほどの音響を皮膚に伝え、顔に紅を咲かせていく。
――逃げられない……だって、でも……!
唇が触れ合うと同時にフェンスに深く沈められ、押し付けられる唇から何かが伝い入ってきた。
思わず瞳をきつく閉じ、手に力を入れるも、左右に閉じ込められた腕の自由は戻ることはなかった。
「――んうっ」
リーアはゾクッと背筋が泡立ち、身体が跳ね上がった。
ふわりとした浮遊感を感じた次の瞬間には一気に身体が燃え上がるような激しい熱を感じた。
先程の与えられた刺激とは全く比べようもない激しさにリーアの理性はすぐにもはち切れそうになる。
「……ふっ、……あ、ああっ……!」
ぞくぞくと駆け上がっていく身体の熱と、とろけるような唇の魔法。
身体がぶるりと震え、力が抜けていく。
リーアの脚が限界を迎え、がくがくと訴えるのと、へたりこんだタイミングはほとんど同時だった。
自然と離れた唇から甘い吐息を幾つも吐き出し、路地の石畳に座り込んだリーアは、とろんと甘く潤んだ瞳で彼を見上げた。
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