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今日も忍ぶ恋心を唄ったもの。
もうすぐ婚姻を控えていた。
自分は跡取り息子
令嬢と結婚しなければならなかった。
子供を作る為だけの婚姻は、嫌で堪らない。
ただ、ここの家の主になれば、この部屋の鍵を手に入れる事が出来る。
音色の主に会えるのだ。
「早く君に会いたい…」
そう、告げて開かずの扉から離れた。
美しい琴の音色が見送ってくれる。
そして、婚姻の日
式を終え、私は、この家の主にとなった。
両親は、離れで暮らす事となり
家の管理は、私がする事になった。
しかし、鍵の中にあの部屋の鍵だけが無かった。
「篠原、あの開かずの部屋の鍵はどれだ」
執事に尋ねるが
「あの部屋の鍵は御座いません」
そう答えられた。
そんな筈はないのに…
ショックで固まってしまう。
何故あの部屋の鍵を隠すのだ。
私からあの音色を遠ざける。
許せなかった。
私は、篠原の後を付けた。
そして、ついに篠原があの開かずの扉の前に立つ。
婚姻から3日後の事だった。
勿論、私は毎晩通っていたが。
篠原は、ゆっくりと扉を開く
「水鳥」
そう部屋の中に話し掛ける。
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