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「篠原さん…」
初めて聞く声
まるで、鈴が鳴るような
か細くも、美しい声が響く。
私は、廊下の陰から気づかれぬ様に中を見た。
黒く長い髪、細く白い体
一枚の着物しか、羽織っていない薄着
表情は確かめられなかった。
しかし、弱っている様に見えた。
食事は、ちゃんと取っているのだろうか…
不安になる。
そして、篠原によって閉められる扉を見つめた。
篠原は、中で彼の人に何をしているのか
気が気でならなかった。
そして、部屋から出て来た篠原の後を着けた。
鍵は、篠原が肌身離さず持っている様だった。
私は、その鍵を奪う為に
眠りに就いた篠原の腹に包丁を突き立てた。
息をしなくなった篠原から、鍵を奪った。
例の開かずの部屋へと急ぐ
高鳴る鼓動を押さえ、扉を開いた。
中には、琴
そして、その前に座る黒髪の美しい
白骨
白骨…
そこには白骨しかなかった。
床には沢山の和歌
私が詠んだ物だ。
私は、膝を落とした。
「貴方が琴を…」
声を掛けても、和歌を詠んでも
返事が無いのは、当たり前であった。
白骨の手に、何か握られているのが解った。
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