一章

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視線を戻し、鏡面になったガラスの彼方を凝視する。 半ば透けている世界では、外神がいる“こちら”とは異なる光景が広がっていた。 外神の隣に落ちてきた影は全体が黒一色で、よく目を凝らさないと、黒土の小山のようだ。 さっきの衝撃で駐車場には亀裂が走り、外神が立っている位置も少し陥没している。 しかし、再び周囲を見ても、黒い小山はおろか、駐車場にはヒビ一つ見当たらない。 更に、落ちてきただけでアスファルトを陥没させるような超重量物が降ってきたにも関わらず、コンビニから人が出てくる様子もない。 (鏡の向こうで起きていることは、こちら側では起こっていない……) そう考えたとき、唐突に影が動き出した。 ガラスの向こうでゆっくりと、小山がその高さを増していく。 その途中で、巨体は丸まっていた上体を起こしていくところで、頭が伸び 、胴体から畳まれていた腕が現れる。 小山の頂上に見えていた部分は影の背中であり、その影がとてつもなく巨大な人型をしていることに今さらに気付いた。 『…………』 音もなく、3m以上に高さを増した相手を、外神は反射した世界で隣に立っている姿をまじまじと眺める。
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