一章

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何かを探しているような視線の動かし方に、外神もそちらへ目を遣る。 だが、半ば予想していた通り、“こちら”には何も変化は起こっていない。 (ならば、“そちら”側か) 外神は反射する世界を探ろうと、立っている場所をずらしていく。 影が顔を向けている方向とは反対の方向、影から遠ざかるように動いていく。 すると、入射角が鋭くなり、鏡の中で“あちら”側の世界が拡張される。 (こちらに無く、鏡面にしか映らないもの……) 現実の駐車場と、ガラスに映る駐車場。 二つの世界を交互に睨み付け、影の視線を追っていくと、鏡の中に白い影を見つけた。 (……あれか) 遠く、ともすれば光の揺らぎと錯覚してしまうような像だが、“こちら”側にはないもの。 その揺らぎを決して見逃さないよう、外神はその白い姿を凝視する。 白い像は今にも消えてしまいそうに揺らいでいたが、黒の影と対峙していた。 影の方は新たな闖入者を認識しているの か、動かない。 「んー……」 目を細めてみていると、白が黒に向かって動き出した。 外神も見失うまいと、元いた位置に戻っていく。
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