一章

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白が黒との距離を詰めていくと、次第に細かい姿が見えてくる。 “それ”は、先に現れた黒い影より遥かに小さかった。 高さは黒の半分強、細いシルエットは影の巨体と比べると、あまりに貧弱に見える。 近づいてくると、白はそれ自体の色ではなく、全身を包む長衣だと分かる。 “それ”は黒と同じく人型で、棒状の何かを右腕に持っていて、それは―― 「……!」 それは、漆黒の異形を遥かに見上げる少女だった。 黒の影とは対照的に、全身を白で包んでいる。 背より少し短い白杖を、壁を作るように体の前で握りしめる。 腰まで裾のある頭巾は、まるで正十字教の修道女のようで、その隙間から覗く黒髪がやけにはっきりと見えた。 斜陽が一層その強さを増し、鮮明に世界を反射するガラスの前。 外神を挟んで、黒と白が対峙する。 『――――』 少女の口が動いた。 喉が動き、胸が上がり、言葉の途中で息を吸う。 言葉を継ぐ顔は、やや強張っていた。 (緊張……恐怖?) 声を張り、しかし激昂しているようには見えない。 眉を上げて淡々と喋る少女の一投足に、外神はしばし見入っていた。 『…………』 言葉が聞こえない鏡の世界で、唐突に、黒い方が少女に応じた 。 応答は動きによるものだった。
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