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外神も同じ表情を浮かべていたが、少女の顔はそれを超えていた。
(そんなに驚くことか?いや、鏡の中で動いてるそっちの方がおかしいだろ)
思考だけが妙に冷静に動く状況で、外神は、自分に向けられたもう一つの視線に気づく。
『…………』
「うおっ……!」
少女に打撃を加えた黒の巨人、その眼が外神を凝視していた。
感情を読み取れない紅い光点が、爛々と外神を見据える。
『――黒の番です』
無言の睨み合いを破ったのは、無機質な女性の声だった。
『黒の番です。黒の番です。黒の――』
声は一斉に、同時に、全方位から外神を襲う。
ブレザーの胸ポケットに入っている携帯電話から、コンビニの店内音楽から、道路を走る自動車のカーステレオから、音割れする広報無線から。
機械のような、抑揚のない声がでたらめに響く。
応じるように巨人が動い た。
軽い挙動でコンビニの窓ガラスに突進し、半透明の膜を抜け出るように、“こちら”側に現れた。
影は、走りの勢いのまま、外神にタックルをぶちかます。
「うお!」
外神は反射的に腰を落とし、右の手のひらを見せるように前へ突き出した。
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