一章

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肥大した右肩が迫る。 外神は咄嗟に突き出した右手で肩を掴み、巨人を押し退けるように力を込める。 反作用で自分の体が横にずれて、巨人の背中に回っていく軌道で突撃をいなした。 高速で互いの場所を入れ換えて対峙した両者を確認するように、 『接触。戦闘を開始』 さっきの無機質な声が再び響く。  ◆ 「来たか」 薄暗い室内に、男の声がした。 どこか楽しげで、期待を含んでいるような声。 発した男は、全身が隠れるほどソファに沈んみこんでいた体を起こし、不敵に笑う。 ゆっくりと立ち上がり、体重を支えきれない脚がよろける。 すかさず、部屋の暗闇から女が現れ、男の脇に腕を差し込んで体を支えた。 侍女服姿の女は、無言で男の脇に松葉杖を差し込むと、現れた時と同じように無音で消える。 残された男は杖に体を預け、時折よろけながら部屋の中央へと歩いていく。 「来たのか、外神の姓」 簡素な造りの室内で、男が向かう先には円卓がある。 円卓には正方形の石板が鎮座し、更にその上には、小さな彫像が無数に乗っている。 「だが助けてやらん」 円卓にたどり着いた男は、林立する駒の一つを眺める。 その先、黒と白が交互に入り混じる盤上に、ブレザー型の制服を着た少年の像が立つ。
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