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砂袋を思い切り蹴りつけたような、重く鈍い音がした。
それが“戦士級”の攻撃によるものなのは理解できたが、外神はそれが実感できなかった。
(打撃が来ない、)
打撃音に付随するはずの、一撃がない。
その代わり、
『前を見ろ少年』
男の声に促され、外神は視線を上げる。
視線の先、数十センチ前には“戦士級”が外神を睨み付けている。
凶悪な腕は降り下ろされて、杖の先端に当たり、止まっていた。
「どうなってんだ……」
外神には一切の衝撃が通らなかった。
まるで拳が当たる寸前、“戦士級”が寸止めしたような錯覚が起きるほど、当たり前のように杖は拳を受け止めている。
そして、
『顕装を成功させたからだ。おめでとう、晴れて君も“こいつ”と等しく同じものだ』
男の声は、外神の手に握られた杖から発せられていた。
なんなんだ、と呟くと杖が再び喋り出す。
『気を抜くな。次が来るぞ』
打撃を止められた“戦士級”が拳を解くと、右半身を引く。
腕をたたみ、引き絞るように後ろに体重を乗せる。
『右が来る。前へ潜り込め』
声のとおりに体が動いていく。
前方へ頭を垂らし、“戦士級”にタックルをぶちかますように低空へダイブする。
“戦士級”の背後、左側へ飛び込んでいくのと同時、頭上の空間を巨腕が撃ち抜いた。
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