一章

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砂袋を思い切り蹴りつけたような、重く鈍い音がした。 それが“戦士級”の攻撃によるものなのは理解できたが、外神はそれが実感できなかった。 (打撃が来ない、) 打撃音に付随するはずの、一撃がない。 その代わり、 『前を見ろ少年』 男の声に促され、外神は視線を上げる。 視線の先、数十センチ前には“戦士級”が外神を睨み付けている。 凶悪な腕は降り下ろされて、杖の先端に当たり、止まっていた。 「どうなってんだ……」 外神には一切の衝撃が通らなかった。 まるで拳が当たる寸前、“戦士級”が寸止めしたような錯覚が起きるほど、当たり前のように杖は拳を受け止めている。 そして、 『顕装を成功させたからだ。おめでとう、晴れて君も“こいつ”と等しく同じものだ』 男の声は、外神の手に握られた杖から発せられていた。 なんなんだ、と呟くと杖が再び喋り出す。 『気を抜くな。次が来るぞ』 打撃を止められた“戦士級”が拳を解くと、右半身を引く。 腕をたたみ、引き絞るように後ろに体重を乗せる。 『右が来る。前へ潜り込め』 声のとおりに体が動いていく。 前方へ頭を垂らし、“戦士級”にタックルをぶちかますように低空へダイブする。 “戦士級”の背後、左側へ飛び込んでいくのと同時、頭上の空間を巨腕が撃ち抜いた。
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