一章

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首のすぐ上を風が通っていき、肌が総毛立つ。 『まだまだ。下がれ』 前倒れの上体を押し上げ、後ろへと思い切りのけ反った。 一瞬前まで外神がいた場所を、左の貫手が刈り取っていく。 空を切った左手の勢いで“戦士級”が回った。 背後を向けた巨体は、両腕を地面に叩き込む。 身長と変わらない大きさの腕に体重を乗せて、足が宙へ浮き、 『蹴りが来るぞ。受け止めろ!』 外神が杖を突き出したところへ、“戦士級”の跳び蹴りが襲い掛かる。 左右揃えた両足の中心が杖を捉え、 「おぉ……!」 超重量を受けた外神は、駐車場を数メートル押し込まれた。 杖持つ手に伝わる感触は、水中で波に押されたよう。 重いが、体にダメージが通る強さではない。 その事実に、外神は驚いていた。 「まじか……!」 自分があの強大な打撃を受け止めたことに。 自分の体がいつもよりずっと速く動き、重打の連撃を躱したことに。 「俺がやったのか」 『そうとも。私がここにいるとは、そういうことだ。ならば最早、君は眼前のものと同じであり、相対するだけの力を与えられた』 杖が返す。
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