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首のすぐ上を風が通っていき、肌が総毛立つ。
『まだまだ。下がれ』
前倒れの上体を押し上げ、後ろへと思い切りのけ反った。
一瞬前まで外神がいた場所を、左の貫手が刈り取っていく。
空を切った左手の勢いで“戦士級”が回った。
背後を向けた巨体は、両腕を地面に叩き込む。
身長と変わらない大きさの腕に体重を乗せて、足が宙へ浮き、
『蹴りが来るぞ。受け止めろ!』
外神が杖を突き出したところへ、“戦士級”の跳び蹴りが襲い掛かる。
左右揃えた両足の中心が杖を捉え、
「おぉ……!」
超重量を受けた外神は、駐車場を数メートル押し込まれた。
杖持つ手に伝わる感触は、水中で波に押されたよう。
重いが、体にダメージが通る強さではない。
その事実に、外神は驚いていた。
「まじか……!」
自分があの強大な打撃を受け止めたことに。
自分の体がいつもよりずっと速く動き、重打の連撃を躱したことに。
「俺がやったのか」
『そうとも。私がここにいるとは、そういうことだ。ならば最早、君は眼前のものと同じであり、相対するだけの力を与えられた』
杖が返す。
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