9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ずいぶんナチュラルに喋るんだな」
『君も少しずつ順応しているようだな。いいことだ』
杖の声は音質の悪いスピーカーから流れているのか、少し割れている。
とにかく、と話す杖の口調は滑らかだ。
『まずはこの状況を終わらせよう』
「逃げるんだな」
『否。倒すんだ。“戦士級”を』
「俺が、か!」
「他に誰がいるの?」
少女が混ぜっ返す。
『そうだ、君だ外神。君が、私を使ってだ』
(こいつ、俺の姓を……)
蹴りを放った“戦士級”が体勢を直して、外神めがけて走り出す。
『君だけなら“戦士級”に抵抗することすらできないだろう。私だけでもそうだ。だが、君と私なら、そうとは限らない』
“戦士級”が迫る。
だが今度は、外神は確信を持って突進を避けた。
“戦士級”の動きが見える。
攻撃しようとする意思が理解できる。
どうすれば避けられるかが分かる。
そして、思った通りに体が動いていく。
『私を使え。丁寧に粗雑に最大限に私を使え』
高速の交差で、両者の位置が入れ替わる。
(俺はもう同じものって、こういう意味なのか……?)
『一緒に敵を倒すんだ!』
改めて杖を握り直した外神は、“戦士級”と数度目の対峙をした。
最初のコメントを投稿しよう!