一章

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仕掛けたのは“戦士級”。 互いの距離を、外神が計りかねているうちに、前に出る。 アンダースローの軌道で、五指を開いて手を払った。 対し、外神はバックステップで後方へ跳ぶ。 が、後ろへと飛んでいく外神の体で、残っていた蹴り足に“戦士級”の中指が絡んだ。 『下を見ろ。死ぬぞ』 そう聞こえた瞬間、“戦士級”の右腕が力任せに振り抜かれ、一瞬で視界がひっくり返る。 指一本での大外車。 投げられた、なんて生易しいものではない。 タイムラグ無しで地面に叩き付けられる。 アスファルトを敷かれた駐車場は外神を受け止めず、投げの勢いをそのままダメージとして返した。 貯めていた空気はすべて押し出され、衝撃をまともに受けた肺は“息を吸う”機能を放棄する。 だが、息が止まって のけ反る外神の隣で、“戦士級”は追撃を構える。 前後不覚に陥った外神をまたぐように駆け寄り、左足を高々と上げた。 ダメージから回復しきっていない外神は、それでも、地面に手を着く。 押し手の勢いで横へ転がるのと同時、“戦士級”の分厚い靴底が踏み降ろされた。 低い破裂音がして、落とされた足の下に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。 必死の一撃を避けた外神は体を起こし、強く咳き込んだ。
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