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少し沈黙し、返答がないので通信機に目を遣る。
「……外神君?」
『ーー聞こえているよ要くん。君の声の後ろから。怨嗟のごとく、慟哭のごとく、彼奴らの焼け落ちる音が私にまで届いてくる』
同調の声は通信から返る。
『彼らの断末魔が光明を想起させる。これまでを報い、これからを照らし輝く暁の光だ』
「私には眩しすぎるわ」
率直な感想を言うと無線の向こうの男、外神は静かに笑った。
『私は、君といられて幸せだった。世界を破壊した大罪と、世界を再生した大功を、君と共有出来るのだから』
「弱気にならないで。まだ何も終わっていないわ」
『そうとも。何も』
通信から響く声が、決意の色を含めた。
『今、虚数は実数と入れ替わる。虚ろの世界で揺らぎはためいていた我々は、ようやく歩き始める足を得た』
ほう、と深い嘆息がイヤホンに響く。
「ちょっと。マイク吹かないでよ」
『だが君は許してくれる。ありがたいことだ』
「あら、誰が許しを決めるの?」
『君は気に入らないことがあると、いつも通信を切ってしまう』
「……そうね。寛容になったものだわ」
『余裕ができたのかい』
どうかしら、と呟いて炎を眺める。
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