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「気付いていない……」
そう言って、外神は思い出した。
VXドライバの声に半ば導かれるように、“戦士級”の攻撃を避けたこと。
あの時外神には、“戦士級”が繰り出す攻撃が分かっていたような気がした。
(俺はこいつとの闘い方を知っていた。いや、)
“知っていた”のではない。
外神の頭に浮かんでいたのは、他者の過去を追体験するような、パッケージされた知識のイメージだった。
(俺は、闘い方の知識を与えられたことがある……!)
そう思った瞬間、外神の視界に変化が起こった。
目に視える世界が変わったのではない。
“戦士級”の姿と、その周りを見る外神の見方が大きく変わった。
まるで、幾百、幾千回と、この闘いを繰り返してきたかのように。
“戦士級”の動きの始点が分かる。
(思い出せ。あの時のように)
“戦士級”の動きを理解し、避けたように。
攻撃をいなして、受け止めたように。
できるはずだ。
迫る左フックを、二歩下がってかわした。
暴風が顔を叩き、前髪が数本千切れ飛ぶ。
拳が通り抜けた瞬間、前に出る。
両手に持っていた杖の持ち方を変えた。
シャフトの末端を握り、下から腕をかち上げる。
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