一章

24/27
前へ
/33ページ
次へ
「気付いていない……」 そう言って、外神は思い出した。 VXドライバの声に半ば導かれるように、“戦士級”の攻撃を避けたこと。 あの時外神には、“戦士級”が繰り出す攻撃が分かっていたような気がした。 (俺はこいつとの闘い方を知っていた。いや、) “知っていた”のではない。 外神の頭に浮かんでいたのは、他者の過去を追体験するような、パッケージされた知識のイメージだった。 (俺は、闘い方の知識を与えられたことがある……!) そう思った瞬間、外神の視界に変化が起こった。 目に視える世界が変わったのではない。 “戦士級”の姿と、その周りを見る外神の見方が大きく変わった。 まるで、幾百、幾千回と、この闘いを繰り返してきたかのように。 “戦士級”の動きの始点が分かる。 (思い出せ。あの時のように) “戦士級”の動きを理解し、避けたように。 攻撃をいなして、受け止めたように。 できるはずだ。 迫る左フックを、二歩下がってかわした。 暴風が顔を叩き、前髪が数本千切れ飛ぶ。 拳が通り抜けた瞬間、前に出る。 両手に持っていた杖の持ち方を変えた。 シャフトの末端を握り、下から腕をかち上げる。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加