一章

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外神は眼を瞑らなかった。 高度を落としていく視界の下の方から、右拳がせり上がってくる。 対し外神は、杖のグリップを握り、槍のように前へと突き出す。 権杖のような十字の装飾を備えたヘッドと、アッパーの距離が零になる。 その時、 『防御シーケンス:起動』 杖から音声が響いて、杖のシルエットが光を放つ。 波動のように放たれた光は杖の周囲で止まり、拳を受け止めた。 拳の勢いも完全に殺され、空中の外神を押し動かすような力もない。 地面に足を着け、“戦士級”から放れた外神は、手元で光る杖を見る。 「これは……」 見覚えがあった。 鏡が写す反射の世界で見た光景。 その中で、少女を“戦士級”の両の拳から防いだのも、この光だった。 『私の機能が拡張された』 「拡張?」 『そうだ。 君の覚醒によって私の機能が拡張され、防御シーケンス、攻撃シーケンスが解禁された』 「今のが防御シーケンスか」 『その通り。多少の攻撃なら防ぐことができるだろう』 そして、と、杖が再び光った。 『攻撃シーケンスを起動する』 防御したときと同じ色の光。 ただ異なったは光の中から、何かが現れたことだった。
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