序章

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摩天楼を覆っていた火炎は、既にその勢いのピークを過ぎた。 都庁舎を覆っていた炎の勢いが衰え始め、隙間から黒の廃墟が覗く。赤が消え、黒の色が増えていく。 夜の闇に君臨していた白亜の塔は、その姿を変えていた。 白から、煤にまみれて濁った黒。 白と黒が、入れ替わる。 終末がすぐ近くまで来ていることを悟り、黒天へと目線を上げる。 「さっき、天城が落ちていくように見えたけど」 『天城だけじゃないさ。新谷も敗れ、飛騨の刃も折れ、ジョン・ドゥも力尽きた。手持ちの兵もみんな、みんな、倒れてしまった』 だが、 と声は続く。 『数多の屍をうず高く積み重ね、その上に立った君が届いた』 「下手な打ち手ね」 『君は許しくれる』 「……そうね。一緒に地獄に堕ちてあげる」 要は一人、空を眺めた。 炎の勢いが衰え出すと共に空間が暗さを増している。 夜を過ぎても、“こちら”は朝に還るのではない。 夜を過ぎて、闇に沈んでいくのだ。 間もなく世界が終わろうとしている。 「そろそろ時間かしら。何か言い残すことはない?」 『それは私が言うことじゃないかな』 「聞いてくれるつもりだったの?ごめんなさいね」
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