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『まったく、君は。
ーー否、それゆえ私は君を愛おしく、君の死に際の心を独占したいと願うのだろう』
苦笑混じりの声が息を吸う。
『なら、約束をする。残される私が、滅びに行く君のために』
「片方が消えるのに約束なんて無しよ」
『消えさせない。消えさせるものか。これは私が君に送る宣誓であり、君の未帰還を以て成立する』
そこで無線は一息つく。
『要くんと外神が、これまでを受け継ぐことを。そして、これから先へ繋いでいくことを、私が君に約束する』
「そう」
『……期待してくれないのかい』
「私に聞かないで。勝手に宣誓したのはあなた。果たすのは私達の行く果て。期待するのは世界でしょ」
『そうか』
あからさまに落胆したような声色。思わず口の端が上がる。
(こんなときもまるで変わらないね。外神君の犬気質)
『きっと君は……変わら……と、笑う……な……』
無線から聞こえる声に、急にノイズが増えた。
(あらまあ、)
「時間みたいね」
『そ……か……』
(最後の最後まで、締まらない人)
こんな時なのに。
つい、失笑してまう。
途方にくれて肩を落としている姿を思い出しながら、要はもう一度マイクに口を寄せた。
「外神君。聞こえないかもしれないけれど、いえ、きっと聞こえていないでしょうね」
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