一章

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(今、何か……) 普段と異なる何かが、視界を走った。 違和感の正体を探して、思わず二、三度回ってみる。 片道二車線の交差点。その角地に立つこのコンビニは、車の往来が激しく、そのため巨大な駐車場が店の前に広がっている。 慌ただしく行き交う車の中に痛車でも見つけたのか、と思ったが、漫然と納得がいかない。 (また……!) 再び、同じ違和感が走る。 二度、三度。 豆乳の紙パックを握ったまま、外神はぐるぐると違和感の正体を捜し、 (……?) 唐突に一点を凝視した。 視線の先にあるのは、出てきたばかりのコンビニ。 店前面は一面ガラス張りになっており、傾き始めた日光を浴びて、鏡のように外の様子を淡く映している。 外神はその中に自分の姿を見つけ、背後を走っていく自動車の影を見る。 当たり前の光景を映しているガラスの中に、新たな闖入者が現れた。 方向は上から。 外神の右側、50cmも離れていない場所に、巨大な影が降ってきたのだ。 「ずぞっ!」 反射的に自分の横へ目を遣る。 しかしそこには、先ほどと同じく無人の駐車場が広がっているだけ。
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