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事の始まりは一月の下旬の朝のことだった。
私が登校するなり、担任の板倉先生に呼び止められて生徒指導室へと連れていかれた。
普段、模範生の私は生徒指導室に入ることはないから、『何かしたのかな』と考えたけど、身に覚えがなくて焦るばかり。
しかも、そこには数学担当でE組の担任である米倉先生と生徒指導の長の田沼先生がどしんと腰掛けているのだからなお焦る。
逃げたくても後ろで板倉先生がドアを閉めるから退路はない。
「座りなさい」
柔道部の顧問を務める大柄の田沼先生は野太い声で私に目の前の椅子を目で示した。
ひぃっ!
震えあがるとともに、反抗することなんてできない私は「し、失礼します」と小さくなりながら腰掛ける。
一体どんなお説教が始まるのやらとドキドキしていると、
「櫻井の実力テストの結果は聞いているか?」
と突拍子のないことを田沼先生が言ってきたから、目が点になる。
櫻井というのは、私の幼馴染かつ、恋人の翔ちゃんのことだ。
「え?あ、は、はい。なんか、赤点を取ったとかなんとか……」
私が怖ず怖ずと答えると、先生三人が一斉にため息を吐いた。
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