新しい一歩

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そして、数日後、 白の葬式が済まされ、徐々に周りが通常の生活へと戻っていっても… まだ、楓にぃはあの日から目を覚ましていませんでした。 僕は、何日も何日も楓にぃの病院に行きました。 そして、すっかり桜は散って… 夏になってしまった、ある日の事でした。 楓にぃの寝ているベッドの脇に座って、じっと楓にぃを見ていました。 真白「楓にぃ…もう、夏になっちゃったよ…」 声をかけても、こたえてくれない。 それがどうしても、寂しくて… そう思ってしまった途端、急いで頭を左右にふる。 だめだだめだっ…!楓にぃが、そこにいるだけで… 僕は、それでいいのに。 とにかく、僕は楓にぃの隣にずっと居よう。 白の事、楓にぃは知らないから。 僕が、………伝えなくちゃいけない。 そして… 「ん…」 考え事をしていたとき、小さな声が聞こえた。 真白「楓にぃ…?」 その声は、楓にぃのモノで、 ゆっくり、ゆっくり、 楓にぃは目を覚ましていきます。 嬉しくて、 嬉しくて、 楓にぃは、生きてたって…改めて実感して。 真白「楓にぃっ…」 起き上がった楓にぃに、ぎゅーっと抱きつきました。 楓にぃも、抱き締め返してくれます。 だけど、その後の言葉で… 僕は心が凍るような感覚に陥りました。 楓「ましろ、待たせてごめんな。お前が生きてて良かった。」 ーーーーーましろ。 楓にぃは、僕をそう呼びました。
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