一.

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 暮崎錠太郎、彼の職業は薬師。どろろ池近くにある、物寂しい通りにて細々と、親の代からの漢方薬局を営んでいた。  漢方薬局の店主という地味な職に似合わず、彼は二枚目の役者とまでは行かぬまでも、なかなかに見目良い顔立ちと、いかにも若い娘受けしそうなすっとした体つきをしている優男であった。が、口下手であるせいか、はたまた大体いつも掛けている、牛乳壜の底のように分厚いレンズの丸眼鏡のせいか、女性にはまるでもてなかったという。  ただ一人を除いては、の話であるが。
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