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「どう思う?」
「どう思う、と言われてもねぇ……」
島村柳弥(シマムラリュウヤ)は、渋茶の入った湯呑みを居酒屋の机に置くと、少々大げさに眉を下げ、わざとらしく困り顔を作ってみせた。黒縁眼鏡の奥の瞳が、探りを入れるようにちろりと、与一の顔を見る。
――こいつめ。
与一は眉間に皺を寄せて柳也を睨むと、持っていた風呂敷包みをどさり、と机に置いてやった。すると柳弥は父親譲りの柔らか且つ円やかな笑みを浮かべつ、そいつをいそいそと開いた。
「やぁ、これはこれは。女将さん、見ておくれよ。上等の菓子だよ。河野屋の豆餅だ」
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