第1話

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『うん……ちょっと具合悪くてさ、バイト休んで帰ろうと思うんだけど』 「えっ……大丈夫!?」 『まぁ、風邪っていうか、単純に寝不足なだけかもしんないけど。 でさ、夕飯ってあんの?』 私は買ってきたばかりの夕飯の材料が入ったエコバックに目をやった。 「あるよ! お兄ちゃんが好きな親子丼! 鳥肉が20%オフだったの」 『お、マジで!? よっしゃ、絶対家で食べるから待ってろ!』 「あはは……うん!」 電話を切ると、胸がほかほかした気持ちになった。 だって、今日はバイトで遅くなるって言ってたから。 もしかしたらそのまま飲みに行っちゃうかもって聞いてたから。 具合が悪いのは可哀想だけど、久しぶりにお兄ちゃんとゆっくりご飯が食べられる。 それだけで、私の鼓動は早くなって、心は嬉しさでいっぱいになった。
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