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教室がざわめく。有名人の様だが、もちろん志音は知らない。几帳面にノートに取るくらいだ。
「ふん、俺の事を知ってる奴もいるようだな。」
彼は、ベストにスラックスという別段、普通の装いだが。右眉の上から、左頬にかけての深い傷跡が、過去の経験を物語っていた。
「今年一年、諸君の実技を担当する。よろしく。それで・・・あ~ゴホン!」
「ミリヤ・リード・スペンサーです。ホームルームや、魔法科学。現代社会の担当です。よろしくお願いしますぅ・・・あっあと、ヒーローネームはっ、ミストフラワーです。」
リチャードの後ろに隠れていたが、彼女も教師のようだ。 見た目は、志音達と変わらない・・・というよりは、幼く見える。
彼女の名前もノートに書く志音。一方。ミリヤの頼りなさげな様子に、周囲がざわめいた。
「静かにしろ!この馬鹿共が!!」
そういう本人の声が、一番うるさいのは世の常だ。
「いいか!こいつは頼りなく見えるがな、この科を受け持つ教師は皆、ヒーローだ!ふざけた態度は許さんぞ!!!」
水を打った様に、静まり返る室内。
「でも先生。皆さんの不安も、あながち間違いじゃないと思いますよぉ?」
「お前は余計な事を言うな!」
失笑が、ちらほらと聞こえてくる。
「とにかくだ!お前達。ここで学ぶつもりなら、規律を守り、勝手な行動は慎む事だ。その若さで、死にたくはあるまい。」
規則を破ると命が無いないなんて、厳しい学校に来ちゃったな・・・そもそも大学生活って、命の危険にさらされるものだっけ?
などと、志音はぼんやりと考えていた。
この後、彼を更なる混乱が待ち受けているのだが、今は知る由も無い。
「では、今から体育館に移動する。生徒会が歓迎のセレモニーをしてくれるようだ・・・が、何と言うか・・がっかりするなよ。」
「私からは以上だ。全員起立!移動開始!」
最後に意味深な事をつぶやく、リチャード。 志音は慌ててノートをしまい、列に並んで歩き出した。
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