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「は~い、それでは私に付いて来てくださぁ~い!」
気の抜けた声で、前を歩くミリヤ。
少し歩くと、随分と頑丈そうな建物が見えてきた、あれが体育館らしい。 朝来た時は、そんな余裕はなかったが。今日は天気もよく、暖かくて心地いい。
遅刻ギリギリだった青年は、春の陽気に、生あくびをかみ殺している。
やがて一行は、目的地に到着し整列して待っていると・・・突然照明が消えた。
どよめく新入生達。暗闇の中で、アナウンスが流れる。
「新入学生の皆さん、ようこそ!只今から私達上級生による。歓迎のセレモニーを始めます!」
すると後方から、奇怪な声がして来た。
「イーッ!!イーッ!!」
昔のヒーロー番組によく見られた、悪の戦闘員達をスポットライトが照らす。新入生が二人、壇上に連れ出された。
その内の一人に、何故か選ばれた志音。戸惑いながらも手を引かれ、座るように促される。なにやらそっと、小さなメモ書きを渡された。
“合図をしたら、台詞を言って下さい”とある。
連れて来られた、もう一人の女性が叫ぶ。
「やめて!私達をどうするつもりなの!?」
なかなか迫真の演技である。よく状況を飲み込めてない志音は、ボケっと全てのやり取りを見ていたが、そこを隣の戦闘員が、つついてきた。 台詞を読め、という事らしい。
「?・・こっ・・こんな事が許されると思ってるのかぁ!」
ぎこちなく、短い台詞を言い終えると。悪の幹部が現れた。
「わめくがいい、愚か者共め!!お前達は大魔王様の生贄になるのだ!!」
先程の女性が志音に近寄り。手を握る。
「心配しなくても大丈夫よ、きっとヒーローが助けに来てくれるわ!」
一斉に笑い出す、悪の軍団。
「ワッハッハッハ!!」
「馬鹿なことを!ここは地獄の一丁目!!誰も助けになぞ来んわ!」
「イーッ!イーッ!」
絶望的なムード。哀れ若き男女は、このまま魔王の餌食になってしまうのか!!!
「そこまでよ!エロ男爵!!・・・じゃなかった。悪の組織め!」
凛々しい女性の声が、館内にこだます。 刹那、凄まじいまでの爆煙と爆音。
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