ヒーロー学園

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 しだいに、ザワザワと動揺が広がりだした。   「え~っ何コレ?今更ヒーローごっこなんて、マジでありえないんだけど。」 「この大学、大丈夫なのかよ。スベリ止めにしとけば良かったかも。」   ヒーローを応援して下さい!!と書かれた大きなプラカードを持って現れた上級生が、余計に痛々しい。  事態の収拾が困難になりつつある中、この混乱を打ち破ったのは誰あろう。志音だった。 「がんばれ!ヒーロー!!」  立ち上がり、雄叫ぶ忘れさられた人質。  もう一人の彼女も叫んだ。 「そうよ、がんばってヒーロー!負けないで!!」  二人の声援を皮切りに、次々と応援の声が上がった。  ミリヤにいたっては、絶叫している。その横で、リチャードが迷惑そうに、顔をしかめていた。  ゆっくりと起き上がるヒーロー、アリス。    うろたえる、悪の幹部。   「ばっ!馬鹿なあっっ!!貴様、なぜ起き上がれる!!」 「守るべき人のいる限り、ヒーローは何度でも甦る!くらえ変態!!」  その時、頭上より清らかな天使の四重奏が響き渡った。 「げぇ!!エンジェルボイスが発動してる!ちょっと先輩やりすぎですよ!」  アリスが青白い光に包まれる。その魂の高鳴りに、悪役を引き受けた哀れな後輩の言葉は届かない。  彼女は今、トランス状態に入っている。    集まったエネルギーを矛先の一点に集中する。しだいに体育館全体も共鳴し、軽い地震の様に揺れだした。    この事態に、教師陣も慌てだす。   「あの馬鹿、なに一人で盛り上がってんだ。」  悪態をついてリチャードは、舞台裏に駆け込んだ。コンピューターを操作しながら、インカムで指示を出す。 「おいエリック、よく聞けよ!今お前の個人用(パーソナル)絶対(イージス)障壁(フィールド)の値を最大にして、前面に展開させた。これで直撃に耐えられるはずだが、爆風に飛ばされてガードが崩れると、確実に病院行きだ。踏ん張れよ。」
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