ヒーロー学園

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「ぇえ~っ!先生が代わって下さいよ!!」  悪の幹部役として今までうまく立ち回ってきたエリックだったが、思いもよらぬ展開に、悲鳴を上げた。 「お前もヒーローだ。後は自分でなんとかしろ。以上だ。」 「うわぁ、最悪だ。もうこうなったら・・・変身!!」  悪役の被り物を脱ぎ捨て、エリックもヒーロースタイルにチェンジした。    赤銅色のバトルスーツに身を包んだ姿は重厚感があり、勇壮である。しかし今、彼の全神経は攻撃では無く、防御に注がれている。   「こんなところでやられる訳にはいかない!僕には・・・ハーレムを作るという大きな夢があるんだ!」    彼の不純な願望はともかくとして、覚悟は決まったようだ。    天使の賛美歌がフィナーレへと進む。美しい高低音のハミングが、攻撃開始の時を告げる。   「ほら、お前達も非難しろ。」  リチャードに促されて、戦闘員や志音達も舞台袖に引き下がった。今は事の推移を見守るしかない。  緊迫した空気。新入生歓迎会は思いがけない様相を呈し、皆、雰囲気に飲まれていた。  生唾を飲み込む音が聞こえる。    ただ、ミリヤだけが。無邪気にアリスを応援していた。   「いっつけぇっアリスちゃん!!ぶっとばせぇっ!!」 「キリエレイソン。我らを許し、主のみ恵みを与えたまえ!」 「ドコォォォォォォオンン!!」  天翔る天使が一撃。蒼白の光持て、広がる悪をば討ち果たさん。  ヒーローアリスの必殺技、賛美歌(ゴスペル)強化(チャージ)の発動により、4次元より舞い降りし4人の天使の祝福がアリスの攻撃力を10倍にしたのだった。  ハルバードより放たれし、一筋の光明は。エリックに大いなる恐怖として襲いかかる!  その閃光、衆目を眩ませ。耳を劈く炸裂音は、聴覚を奪ったが、それらはやがて静まった。  壇上、只、二人。
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