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「うぐぅっ、みんなと一緒にいたんだけどねっ、はぐれちゃったのっ。」
「そっかぁ・・・うん、じゃあ、みんなを探そうか。」
「んっ。」
開いている右手に少年の手を取り。二人は歩き始めた。
「あっ、たっくん、いたよ!」
無事合流できた事を喜ぶ子供達。
「良かったね。」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「あっ!志音(しおん)君が連れてきてくれたんだね!」
「ええ。じゃあ自分、出前がありますので、失礼します。」
「バイバ~イ!!」
手を振る子供達と女性に、微笑を返し。爽やかに立ち去る青年。慣れた足取りで、所長室へと向かった。道すがら、出会う職員にも挨拶していく。
やがて、部屋の前へと通されて、ドアをノックする。
「どうぞ、あぁごくろうさまだね。」
室内には一人の初老の男性が座っていて、ヒーローセンターの制服に身を包み、人なつつっこい笑みを浮かべていた。
志音が岡持ちから、ラーメンと餃子を取り出すと。待ちかねたように、手をすり合わせる。
「もう三月とはいえ、まだ寒いからねぇ。こんな時には、ラーメンに限るよ。」
「ふふっ、去年の夏には、暑いからこそ、あえて食べるラーメンが美味いんだって、おっしゃってましたが。」
「えっそれ本当?そんなこと言ったっけ?なんだかな~~っ」
「なんですかね~~っ」
笑いあう二人。
「そういやぁ、志音君。もう大学生になるんだっけ?」
「はい、そうなんです。何とか奨学生にもなれたんで、じいちゃんも喜んでくれてます。」
所長は、すすっていたラーメンの箸を置いた。
「鉄(てっ)舟(しゅう)さんは、お元気ですかね?」
「えぇ、今のところは・・・長年の無理が祟ってると、医者の先生には言われてますが。」
「そうかね・・・彼は僕達にとって憧れのヒーローでね。長い間、随分と助けて頂いたよ。」
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