ヒーロー学園

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 黒いスーツに、シルクハットが決まってる。    声をかけてから、そうと分かった青年は、バツが悪そうに縮こまった。 「おぉ、・・・確か君は、今年の新入生の志音君じゃあないかね。面接で会ったのを覚えているよ。もしや、道に迷ったのかい?」   「はい。申し訳無いです。」 「なに、謝ることではないよ。この私も、弟も。かつては迷って初日から遅刻したものさ。」 「えぇっ!そうだったんですか。」 「その苦い記憶から、登校初日は迷ってる生徒がいないかと。こうして、見て歩く事にしてるんだよ。しかし、今は時代が進んだねぇ。」  そう言うと、理事長は近くに在るコンピューターのインターフェイスから、なにやら操作をし始めた。  立体映像の矢印が表示され、そこに。(ヒーロー科)と浮いて出ている。 「ほら、後はこの道標を辿って行くと良いよ。」 「ありがとうございます!」  深々と頭を下げ、先を急ぐ青年を、理事長は、目を細めて見送った。  矢印どうりに進み、扉を入ると。そこは、すり鉢型の講堂である。 まだ授業は始まってない。安堵感と疲労から、近くの席に倒れる様に座り込んだ。  息を整え、冷静に周りを見渡して見ると、皆、育ちの良さそうな顔ばかり。  「う~ん、なんか場違いな感じだな・・・こんな所だとは知らなかった。」  ヒーロー科には、特別入学という制度が設けられている。  実績のある、ヒーローからの推薦を受ける事で、厳しい倍率の競争をせずとも、簡単な面接と試験で済むのだ。  志音は、鉄舟の推薦を受けたのだが、その事実を面接官が知ると、合格どころか奨学生の資格まで与えられた。鉄舟は、ヒーローだった過去を語ろうとはしない。  異例の待遇に、彼は首をかしげる事ばかりだが、そのうち理由を誰かに聞いてみよう・・・と思って、そのままになっている。 「ようし、全員そろってるな。では自己紹介だ。」  そう言って教室に入ってきた男性は。教壇のインターフェースで、自身の名前を後方の黒板に出す。 「リチャード・ブロンズだ。ヒーローネームはジャッカル。」
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