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冷華が恐る恐る聞いた。
「え?感じなかったよ?」
弥生はあっけらかんと言った。
「…………」
妙な間が空く。この教室だけで起きたとは、思わないほど揺れたのだ。
「それもその筈だろうな、我らが起こした擬似的な地震だからな」
弥生の後ろに薄紫色の髪の長い男と、紫髪のメガネをかけた女が弥生の後ろに立っていた。いつの間にか、しかし当たり前のようにいる。
「あなたはどちら様?」
弥生が声に気づき後ろを向いた瞬間、男は弥生を気絶させた。
「先生!!」
近くに居た水龍と砂龍が弥生を受け止めた(が、下敷きになった)。
「さて、私の目的はただ一人、黄月雷鬼。貴様だ」
男は雷鬼を探し出し、女と共に距離はあるが目の前に来た。
「俺になんのようだ?…人に恨まれるようなことはしたことないけど…妖怪は別だけど」
雷鬼は妖怪を倒していた、いや、殺していた、その家族が、友人が、自分自身を殺しに来るのは仕方ないことだと思っていた。
そんな奴はいなかったが。基本的に殺してたのは本当に悪さしてる奴だけだった。
「妖怪?私達が?違うわ」
女が怪訝な顔をした。
「じゃあ、あんたら何者よ?!」
風蝶が聞いた。雷鬼は胸騒ぎの理由がわかった。
「悪魔軍よ!」
女は言葉と共に風蝶に殴りかかったが雷鬼が受け止めた。
「神に反逆する者、か…」
雷鬼は女の右拳を受け止めながら呟いた。雷鬼は妖怪ではなく悪魔と言う厄介な奴が来るとは思ってなかったのだ。
いや、薄々気づいていた。なんとなく、いつ来るかは分からなくても、来ることを。
「黄月雷鬼…貴様には死んでもらう…」
女が雷鬼に話しかけた。低く、蛇の様な声で。
死、そのワードが場を静かにさせた、ふざけて死ねと言う学生たちは、本当に殺しにかかる女の言葉の重さを感じた。
「貴様は成績が悪いようだな…」
男は静かに、しかし、殺気を飛ばしながら話しかけた。
「だから何だよ……」
雷鬼はなんとか女の拳を受け止めながら答えた。
「貴様のような人間がいて、何の役に立つ?成績は悪いくせに、力だけ持っている。力だけでは社会に生きて行けると思っているのか?」
男の言葉が深く刺さる。雷鬼は承知の上でいた。自分の夢もはっきりしない、やりたいことはあんまりない。好きなものと特技は違う。わかっていた。
「くっ…」
雷鬼は悔しいが事実であることを否定できなかった。
「この場で死んでもらおう、みんな喜ぶぞ?」
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