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「行ってきまーす」
閑静な住宅街。しかし朝になれば騒がしくなる。
学生や会社員が慌ただしく道を行きかう。
そしてこの町いや、学園と言おう。私立明月学園東住宅区も例外なく朝は騒がしい。
一人の少年、黄月雷鬼。彼も同じように学校に急いでいた。
この学園は広い、早めに出なければ学校に間に合わない。中学二年生の彼にとっては、中等部は少し遠い。
「ふぁあー……」
気の無いあくびをしながらも歩を進める雷鬼。
「?」
風が急に騒ぎ始めた。雷鬼は気にする様子はないが、誰かが来たのは分かった。
「よう、風蝶」
「相変わらず早すぎ」
桃色の髪の少女、桃月風蝶が文字通り舞い降りた。
「あんまり空飛ぶなよ、俺は一般人なんだからさ?」
「便宜上はね。そろそろ皆に話したら?特異能力者でーすって」
「言う気が有ればな」
この学園内には特異能力者と言う、人間の力とは思えない力を持つ者たちが大勢いる。
特異能力の区分は三つ、能力者の見たものに起因する見聞系。能力者の体に影響がある身体系。能力者の頭脳に左右される操作系。
風蝶が身につけたのは操作系特異能力・『風神の巫女』。雷鬼の能力は『二装式』。
「あんたさー、なんで隠す必要あんの?知ってる人多いし、別に今更言ったって皆気にしないと思うけど?」
「まぁ、言ってもいいけどよ。俺が底辺の人間じゃ無いと困る奴も居るだろ?そう言う事だよ」
「は?」
風蝶の足が止まった。それもそのはず、雷鬼の言っている意味が分からないのだ。
「なんだよ?俺は成績悪いんだぞ?成績は良いけど、特異能力者じゃない奴にとっては、俺は良いいじめっ子だろ?」
「あんたね……まだそんなこと言うの?」
雷鬼は過去に虐められていた。そのことをまだ引きずっていたのだ。ちゃんと友達も居る。
だが、雷鬼にとってはその友達すら、不安要素になってしまうのだ。
「あんた成績とか言ってるけど、一部のガリ勉どもの話でしょ?」
「まぁな…ほら、俺馬鹿だし口だけだし?」
「どこが?」
風蝶は雷鬼の頭の良さを知っていた、机の上での賢さではないが。
「まぁ、そう言う事だ、俺は底辺の人間で良いんだよ」
「はぁ?だから、もう!いい加減にして!!」
「何を?」
雷鬼は意地の悪い顔をして笑った。
「何を?じゃなくて。あんたは底辺の人間じゃ無いでしょうが!このチート頭脳が!」
「何のことダイ?」
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