第一夜「導き・戦い・理解」

6/68
前へ
/145ページ
次へ
中等部校舎・二年B組教室。 「竜斗!おはよう!」 雷鬼は元気に鞄を自分の席に置きつつ田宮竜斗のそばに寄った。 「おう」 竜斗は容赦なく雷鬼に手刀を放った。難なく受け止める雷鬼。 「雷鬼、おはよう!」 白倉正兎が雷鬼にあいさつしながら飛び蹴りをした。 「ああ、正兎。おはよう」 雷鬼は平然と腕で止めた。正兎は一旦翻り、着地した。そして普通に雷鬼に近寄った。 「雷鬼君、おはよう!!」 風島優利も雷鬼に正拳を放ったが、雷鬼は掌で受け止めた。ものすごい破裂音が教室を駆け抜けた。生徒達は何事かと静まった。 「おはよう」 雷鬼は静かに言いながら、優利の拳を下に下げた。 「…………」 静まった教室を無視して、雷鬼は竜斗達を見つめた。 「朝っぱらから何?こう言う事は学校でしない約束だろ?」 雷鬼は元々、特殊な環境で育っているため、運動神経はいい方なのだが、急にそういった事を見せなくなった。 「さっき、空を飛んだから」 竜斗は気に留める様子もなく答えた。 「飛ぶ(フライ)じゃなくて跳ぶ(ジャンプ)な?」 雷鬼はどうでもいい理屈をこねた。 「雷鬼、どうせばらすつもりだろ?」 正兎は雷鬼を呆れながら見た。 「何を?正兎?」 雷鬼は気に留める様子はなかった。 「雷鬼君、本当は分かってるくせに…」 優利は呆れていた。 「へいへい」 雷鬼の気の無い返事。 「なぁ、黄月?お前特異能力者なのか?」 長城令介が話しかけた。 「えー?違うよ?」 竜斗の手刀が飛んできたが受け止めた雷鬼。 「嘘つくなよ?『二装式(ダブル・アクション)』?」 「それはそもそも、総称の一つだろ?竜斗」 雷鬼は竜斗の手を下げ、令介の横を通った。 「信じるも信じないも、君の自由だが、特異能力者であることはもう隠さないよ?長城君?」 雷鬼はそう告げると、席に着き、本を読み始めた。それを合図なのかちょうどチャイムが鳴り響いた。 生徒達は席に着き始める。 時間は飛びに飛んで午後の授業。今日は特異能力者と一般人を分け、特異能力者は検査、一般生徒達はそれぞれ自習ということになっている。 特異能力者検査室。 「えー黄月君が訳あって、特異能力者だそうなので今日からこちらになります。好きな席に行ってね」 中等部特異能力者二年担当でもある弥生が雷鬼に席に着くよう促した。 「よ!お三方」 雷鬼は当たり前のように竜斗・正兎・優利三人の合間の席に座った。 「やっと来たか、雷鬼」
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加