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……。
女の子。
女の子が俺の体に密着している。
抱きつかれている。
お布団の中で、
俺と、女の子と、二人。
これは…………。
……なんとか異性交遊……。
「……フフッ、目が覚めたようですね」
そのとき。
俺の懐にすっぽり収まっていた女の子の顔から、不適な笑みと共に声が漏れる。
「ふふふ。どうですか、愛しのオフトゥンに抱きつかれてる心地は。気持ちよかろう? 気持ちよかろう???」
オフトゥン……愛しのオフトゥン……。
オフトゥンって、俺のお布団のことじゃあないか。
「あれ? もしかして驚いてます?? そりゃあそうでしょうね!! あの愛しのオフトゥンが!! こんな可愛い女の子になっちゃったんですから!! そうです、ボクはお布団から生まれた妖精『オフトゥンちゃん』なのです!」
テンションを上げてオフトゥンちゃんは更に俺を強く抱き締める。俺の目下にはオフトゥンちゃんの透き通った綺麗な銀髪が見てとれた。銀髪ボクっ娘妖精……ほう、なかなか新しい。
「……で、この夢はいつ覚めるのかな」
「へ?」
……あぁ。こんな夢は沢山見てきた。
テレビ見てたらいきなりテレビが擬人化する夢。登校中に毎日会うネコが擬人化して現れる夢。昔飼ってたクワガタが擬人化して現れる夢……。
何か身近なものが擬人化して現れるという夢を、なぜか俺は頻繁に見ちゃうのだ。
そして、決まってこの幻想をぶち殺す合言葉が、さっき言ったあの言葉。
その言葉を放てば、擬人化したそいつらは釈然としない表情のまま俺の中の深淵に消え、俺は微妙な寂寥とため息のもとに朝を迎える……。
はずなのに。
「……何を言っているんです?」
「……は?」
このとき。
パリンと、どこかでガラスが割れたような音響をゴングに
物語は始まった。
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