身近な君へのホワイトデー

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高田社長を玄関まで見送って、部署に戻った俺は、気が付けば皆に囲まれていた。 おめでとうやら、良かったなぁとか、褒めちぎられていた。 そんな中、1人違う言葉を掛ける奴がいた。 美奈… その言葉は… 『ありがとう。』 周りの声がかき消されたような錯覚に陥るぐらい、俺には特別の一言。 「お前のためにやったんじゃない。」 素直じゃない俺… 照れ臭くて… 本当は、美奈がいるから頑張れた。これまでも、これからも… ありがとう。と伝えるべきなのに… 『そ…』 久々に出た俺の嫌いな『そ』 ちゃんとお礼言わんと… 今夜、ご飯でも誘うか… あっ!すぐに仕事にかからないと… あっと言う間に夕方… 『終わりそう?』 美奈が心配して声をかけてくれる。 「持ち帰りにするしかないな。」 やらなきゃならない事より、やりたい事が多すぎる。 仕事としては充実してるんだが、こんな日ぐらい美奈と食事に行きたい。 『手伝おっか?』 すごく嬉しい言葉… 「来週から手伝って? 今日はもう仕事終わりにして持って帰るから、ご飯行こ?」 『うん。』 にこりと頷く美奈を見て、思わず抱きしめたくなる。 でも、ここは会社。 一番の問題は、美奈がヒールを履いている。 また玄関での出来事を思い出す。
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