第1話

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 目前に広がるは、灰色に覆われた、無味乾燥な景色であり、すべてが興ざめていった。  そうした状況下での運転は二、三時間が限度であり、次第に私は休息する場所を探しながら運転するようになっていた。そんな折りに私の目に入ったのは、神社の看板であった。  神社であれば、人の視線を気にすることなく、身体を休めることができると思った。  看板に従い、私はわき道に入っていき、駐輪場のようになっているところにバイクを止めた。  そして、雨でぬかるんでる足下に気をつけつつ、自然に囲まれた小道をくだっていった。    道の両脇にある木々は、あたかも天然の傘のごとく、降り注ぐ雨から私の身を守ってくれていた。そして雨は先ほどと異なり、自然の中に雅を加える、心地よい音色を奏でる天然の楽器となっていた。  私はそのために、この神社に導かれたに違いない、と錯覚した。さらにこの神社には親切なことに、休憩所となっている小屋があり、ひとまず、私はそこにて立ち入った。
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