第1話

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 翌日、オープンさせるとともに、悠が来店してきた。  意外だった。再び来ることも、そしてこれほどにも早く会えることも。 「ちょっとバーテンダーさん。せっかく大学が終わったから来てあげたのに、なんですかその、不審な顔!」   「傘を返したから、もう来ないと思ってさ」という本音を、私は冗談気味に言った。 「あたし、こう見えても律儀なの。バーテンダーさんのお店覗いたら、だーれもいないから、入って来てあげたんだから」  悠の言葉のとおり、彼女がいるときは、客が誰も居なかったのである。 (悠があえて誰もいないタイミングを狙っていたことを、そのときの私は知らなかった)  悠はカクテルメニューを楽しそうに見つめていた。その瞳の輝きが、自分は恋しくもあり、恐ろしくもあった。  
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